仔犬を抱いた写真で多くの方に知られている少年飛行兵達は「第72振武隊」隊員です。写真前列左より、早川勉伍長(18歳)、荒木幸雄伍長(17歳)、千田孝正伍長(18歳)、後列左から、高橋要伍長(18歳)、高橋峯好伍長(17歳)で、5月27日に散華され全員少尉へ昇任されました。
特攻最年少の17歳2名を含む5人組は、自分達の事を「ほがらか隊」と呼んでいました。実際に底抜けに明るい彼らを目にした現地の人達は皆驚いたそうです。しかし、出撃を前にした第72振武隊の宴席で、ある者は郷里の家族への思いの述べ、ある者は泣いたそうです。
この写真は、新聞に「某基地にて」と掲載されたため、戦後もしばらく第72振武隊は知覧から出撃したと伝えられてきましたが、戦後しばらくして5月26日に万世飛行場からの出撃を待っている時の写真だということが判明しました。万世基地整備隊の隊長が生後1ケ月くらいの子犬を拾ってきて餌を与えていたところ、犬好きの荒木伍長が抱き上げた際に報道カメラマンが撮影したものです。
彼らは出撃の前日、南薩鉄道加世田駅近くの「飛龍荘」に宿泊していました。飛龍荘は大きな割烹旅館で2階に第66戦隊隊員、一階が特攻隊員の宿泊用とされていました。そして飛龍荘にも、鳥濱トメのように隊員たちに心から尽くしていた女主人、山下ソヨさんがいました。鳥濱トメや山下ソヨさんのように、親身になって隊員たちの面倒をみた方は全国各地にあった基地周辺に居たと思われます。
結局、出撃は翌27日となりますが、彼らにとってこの写真は出撃予定の約2時間前の出来事でした。これから死地に向かう17,18歳の若者が子犬の小さな命をいたわって浮かべる純真な笑顔に多くの方々が心を打たれると思います。
日本のために若い命を捧げざるを得なかった方々のためにも、現代の若者は溌溂と自分の人生を満喫して貰いたいと思います。そうできる世界となりますように。
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